平らな布が、一足になる。『陸王』からたどる行田足袋の仕事

白いプリーツスカートに、赤とチェック柄を組み合わせた行田足袋を合わせた装い。
写真/SAMURAITABI 侍足袋 提供

平らに裁った布が、つま先の分かれた一足になる。足袋を見慣れていても、その間にある縫製の仕事までは、思い浮かべにくい。

ドラマ『陸王』は、足袋の需要が減るなか、老舗の足袋屋「こはぜ屋」がランニングシューズの開発に挑む物語だ。舞台となる埼玉県行田市では、いまも足袋づくりが続いている。

物語が投げかけるのは、受け継いだ技術を次に何へ使うのかという問いだ。そこから一度、現実の布製足袋へ目を戻してみる。ドラマのランニングシューズと同じ性能を重ねるのではなく、布を足の形に仕立てる仕事をたどりたい。

ドラマ『陸王』で、黒い足袋型のシューズを手に持つ主人公。
写真/日曜劇場『陸王』公式サイトより

布を裁ち、留める場所をつくる

足袋の輪郭を決めるのは、分かれたつま先と、かかと、甲、そしてこはぜを留める後ろの部分だ。平らな裁片を組み合わせ、その形へ近づけていく。

行田足袋の製造では、布が工場に入った瞬間から、すでに細やかな工程へ入っていく。最初に行うのは裁断の準備。布目を整え、何枚もきれいに重ね、あとで刃がぶれないようにする。そこから裁断へ進み、型に合わせて必要な裁片を切り出していく。

続いて後ろのこはぜまわりの仕事に入る。まずはかけ通しを施し、押さえで糸を安定させ、さらに裏側に補強のための布を添える。これがハギマチだ。土台が整ってから、ようやくこはぜつけへ進む。

そこから足袋は、少しずつ立体になっていく。表地と裏地を合わせる羽縫い。甲の線をすっきり収める甲縫い。かかとの丸みを足のかたちに沿わせていく尻止め。そして、つま先を縫う爪縫い。平らに裁った布が、工程を追うごとに足のかたちへ近づいていく。

さらに「まわし」でつま先以外の部分を縫い、縫った箇所に千鳥縫いを施して、糸がほつれるのを防ぐ。最後に仕上げを経て、一足の足袋がようやく足袋らしい姿に収まっていく。

工程名を覚えるより、そのたびに布の形が変わるところを見る。こはぜを留める場所をつくり、甲やかかとを縫い、底と合わせる。見えにくい補強も、一足を形づくる仕事に含まれている。

一足の後ろに、町の分業がある

行田で足袋づくりが育った背景には、綿や藍の栽培と、藍染めの木綿布があった。材料が手に入り、作る人が集まる。江戸時代に根を下ろした足袋づくりは、明治以降、ミシンや電力などの導入によって生産を広げていった。

最盛期の行田では、年間八千万足以上の足袋が作られ、日本全体のおよそ八割を占めたという。

裁断から仕上げまでを追ったあとに、この数を読むと、産地の大きさの見え方も変わる。縫う手だけでなく、布を供給し、製品を運び、注文を受ける仕事が、その生産を支えていた。

埼玉県行田市の忍城と、その手前の木橋。
『陸王』にも登場した行田市の名所・忍城|常若撮影

白や藍の、その先の一足

白や藍の足袋に加え、日常の装いへ合わせやすい色や柄の製品もある。同じ分かれたつま先でも、生地や配色で印象は変わる。装いの一部として選ぶとき、足袋は歴史を知るためだけのものではなくなる。

行田のSAMURAITABI 侍足袋も、そうした一足に出会う入口になる。台湾にも紹介され、行田と使い手をつなぐ一足になっている。

選ぶときには、生地と縫製を見て、足に合う寸法を確かめる。履き心地は、足の形や製品によって異なる。『陸王』が描いたランニングシューズの「裸足感覚」と、伝統的な布製足袋の特徴は、分けて受け取りたい。

赤いチェック柄と黒無地の足袋を履いた二人の足もと。
写真/SAMURAITABI 侍足袋 提供
木のベンチに置かれた、黄色地に黒いドット柄のSAMURAITABI 侍足袋を履いた足。
写真/SAMURAITABI 侍足袋 提供

布を裁ち、つま先を分け、かかとを丸く縫う。最初は平面だったものが、足を通せる形になる。今日の服に合わせる一足のなかにも、その仕事が収まっている。

行田足袋でよく使われる製造工程のことば

  • 裁断
  • かけ通し
  • 押さえ
  • ハギマチ
  • こはぜつけ
  • 羽縫い
  • 甲縫い
  • 尻止め
  • 爪縫い
  • まわし
  • 千鳥縫い
  • 仕上げ

参考資料:

日曜劇場『陸王』

KOGEI JAPAN

埼玉県行田市観光公式サイト

SAMURAITABI

SAMURAITABI侍足袋 (台灣)

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